コールセンターにとどいた声

介護家族の声

CASE01

夫が認知症と診断された直後で混乱している[相談者:妻]
[対象者:夫 50代後半 アルツハイマー型認知症]

相談内容

夫は、1年くらい前から銀行の預金口座の暗証番号を忘れるなどのもの忘れがあり、体調も悪く、病院もいくつか受診しましたが原因がわかりませんでした。最近、親族が亡くなり、夫が相続関係の手続きをしておりましたが、必要書類の作成などができていないことからとても心配になり、専門医療機関を受診しました。検査の結果、アルツハイマー型認知症と診断を受けて、私も夫も不安で混乱しています。夫は会社で営業の仕事をしていますが、話をすることはできても、相手から聞いたことを覚えていられないため、業務にミスが起きないようにという思いで取り組んでいます。会社にはまだ病気のことを伝えられずにいます。このまま仕事を続けることが会社や夫に良いことかどうかわかりませんが、できれば夫にはまだ働いてほしいと思っています。高齢の親には心配をかけたくありません。

相談者の思い

  • 夫にはまだ働いてほしい。
  • 仕事が負担になっているなら辞めたほうがいいだろうか。
  • 周囲に頼る人がいないので、1人で夫を支えられるだろうか。

相談員の対応

診断直後でとても混乱され不安であることをお察しします。これからは1人で抱え込むのではなく、支援者に相談していくことも大切になってきます。
まずは、若年性認知症支援コーディネーターにご相談されることをお勧めします。若年性認知症支援コーディネーターの役割として、就労の継続に関する支援も行います。
また、就労の継続に関しては、地域障害者職業センターという専門性の高い就労支援として、職業評価やジョブコーチ等を行う機関がございます。このような支援を進めるためには、まず会社の信頼できる上司などに病気について報告することが必要になります。そのことについてご夫婦でよく話し合うことをお勧めします。
経済的なことも不安ですね。若年性認知症コールセンターのホームページには、生活を支える制度や支援(傷病手当金・自立支援医療・精神障害者福祉手帳・障害年金など)を掲載しています。一度ご覧ください。また、資料集には「若年性認知症ハンドブック」を掲載しております。ダウンロードして印刷することも可能なので、お役立てください。

CASE02

父に自動車運転をやめてもらいたい[相談者:娘(40代)]
[対象者:父(60代)就業中]

相談内容

受診している心療内科にて、アルツハイマー型認知症の可能性を指摘されている父親が運転をやめてくれません。運転操作に関して認知機能低下による支障が顕著に現れているにも関わらず、専門の医療機関に受診することを拒否しています。自動車運転時の問題は、①慣れた一方通行の道路を逆走しそうになる ②駐車時に自宅の外壁に接触する ③シフトレバーの使用方法がわからなくなることが頻繁に起きる、等です。 

相談者の思い

  • 父の車に同乗すると危険を感じるので、運転はやめてほしい。
  • 認知症の可能性があるのであればきちんとした病院を受診して今後の策を考えたい。

相談員の対応

相談者様がお父様の自動車運転について困惑されているご様子をお察しいたします。
お父様は就労中とのことで、通勤でもお車を運転なさっているようでしたら、危険なことも起きる可能性があります。心療内科では診断名がついてはいないとのことですが、相談者様が受診に付き添うなどで、お父様の状況を主治医にお伝えし、医師から運転についての助言をご本人に対してしていただく方法はいかがでしょうか?また、各都道府県には警察庁が定める安全運転相談窓口というものがあり、運転適性相談をすることができます。インターネットでの検索もできます。
ご本人の納得の上で運転をやめていただくことが望ましいので、説得の方法をご家族で検討されることも必要かと思われます。また運転をやめた際の通勤方法についても今から検討されると良いでしょう。
また、各自治体に認知症初期集中支援チームが設置されており、初期の受診について相談することができます。全国各都道府県に配置されている若年性認知症支援コーディネーターは、総合的な相談に対応していますので、受診や運転のことなどご相談することをお勧めします。

CASE03

認知症の夫が今の仕事を続けることが難しくなってきた[相談者:妻 50代後半 女性パート勤務]
[対象者:夫 50代後半 アルツハイマー型認知症]

相談内容

夫は認知症を発症して3年になります。ありがたいことに仕事先では病気への理解もあり、配置転換などの対応を受けて何とか仕事を続けてきました。妻は、自身の通勤前に時間の許す範囲で夫の電車の乗り換えまでを同行しサポートを続けてきました。しかし、最近になって夫の症状が進み、妻が同行していない部分での電車通勤が難しくなってきました。そろそろ仕事をどうしていくか考える時期になってきました。

相談者の思い

  • 配置転換などの配慮をしてくれた会社には感謝している。
  • 夫の電車通勤をサポートしてきたが妻にも仕事があり疲れを感じている。
  • 退職を控え、今後どのような制度が使えるのか。

相談員の対応

利用可能な制度として休職する際には傷病手当金があります。すでに障害年金は申請可能な時期にありますので、主治医に申請について尋ねるようお勧めいたします。傷病手当金受給完了後に使える制度として雇用保険の失業等給付があります。当コールセンターのホームページにも情報がありますので参考にして下さい。
休職中に福祉的就労(就労継続支援A・B型事業所など)の利用が可能になる場合があります。
休職中・退職後の仕事や過ごし方などについて、ご本人のお気持ちに沿いながら検討できるよう、お住まいの地域に配置されている若年性認知症支援コーディネーターへ相談することをお勧めします。

CASE04

受診を嫌がる母
※コールセンターのメール相談から電話相談につながったケース [相談者:娘]
[対象者:母 50代 もの忘れあり]

相談内容

メール相談では、母が認知症ではないかと思い、心配な症状を書きました。その後の電話相談で詳しく話を聞いてもらい、その場で返答をもらったので安心しました。
父は、母の様子が3年前からおかしいと言っていますが、母に受診を勧めても機嫌が悪くなり受診に応じてくれません。母にはもの忘れがあり、感情の起伏もあり父と私に強くあたります。父は介護関係の仕事をしているので、母への対応方法はわかっていると言い、父一人の対応で乗り越えられると思っているようです。

相談者の思い

  • 母に早く受診してほしい。
  • 父に負担がかからないようにしたい。
  • 遠方に住んでいるので、すぐにかけつけられない。

相談員の対応

お父さまお一人で抱えてみえるのはとても心配ですね。
受診をすすめるときは、「認知症」という言葉を使わず、真にご本人を心配する気持ちを伝えて説得してみましょう。行きなれた近医の内科などがあれば、まずそこへの受診を勧めてみても良いでしょう。検査を受けることで脳血管性疾患や内臓疾患など早期に治療することが望ましい病気が発覚することもあります。そのようなことを伝えながら、なぜご本人が受診を拒むのかよく尋ねてみましょう。ただ、あまりにご本人の拒否が強く、今の状態がご本人の健康に危険がないような場合には、一旦受診勧告を休んで、ご本人の気持ちが落ち着くのをしばらく待ってみるのも良いかと思います。
また、各自治体には認知症初期集中支援チームが設けられているので、ご相談することができます。

CASE05

若年性認知症の人に適した制度を[相談者:妻]
[対象者:夫 50代 アルツハイマー型認知症]

相談内容

夫は認知症を発症して数年経ちます。職場の配慮もあり就労を続けましたが、現在は休職をして傷病手当金と障害年金を受給しながら生活しています。傷病手当金が終了したら、雇用保険を申請したいと思います。しかし、症状が進行していく病気なので雇用保険を申請する時に夫はどのような状態なのか分かりません。若年性認知症の人が利用できる制度はあるものの進行性の病気には失業等給付申請時に行う求職活動は適合しにくいように感じます。今後制度について考えてほしいと思います。

相談者の思い

  • 進行性である若年性認知症の人がうまく適合するような制度を考えてほしい。

相談員の対応

雇用保険と傷病手当金障害年金について説明をしたうえで)
それぞれの制度を空白の期間が少なく利用できたケースもあります。しかし、既存の制度を若年性認知症の方も利用するなかで、疾患の進行度合いが個別に違うことから、申請時の条件等に適合しないケースも生じます。今後、若年性認知症の方に特化した制度ができればと切に思います。
若年性認知症の方の個別に違う状況に合わせ、話を傾聴し寄り添い、最良の制度利用方法を一緒に考えていければと思います。